2024年03月16日更新
月がきれい 文学 考察

【月がきれい】各話サブタイトルの元ネタと思われる文学作品まとめ!本編ともちょっとリンクしてる!

2話のサブタイ『一握の砂』は石川啄木の歌集。おそらく、2話で茜の芋マスコットがポケットから滑り落ちた様子と、握った砂がこぼれ落ちる様子を重ねているのだと思われます。他の回についても、本編と元ネタ作品の間に何かしら関連性を見出すことができます。1話から最終回12話まで対応。

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1話『春と修羅』 → 宮沢賢治の詩集

出典:blogs.yahoo.co.jp
『春と修羅』という詩集の中に、詩集タイトルと同名のタイトルの詩が含まれています。
《詩集の解説》
「心象の はいいろはがね(灰色鋼)から」で始まる本作は、「おれはひとりの修羅なのだ」という箇所に象徴される、主人公「おれ」の自己規定もしくは自己宣言を伴った内容となっている。また、春(の情景)と心象風景という「内面と外景」「光と影」といった対比が印象的で、これは他の賢治作品にもしばしば見られる特徴となる。
引用元:ja.wikipedia.org(引用元へはこちらから)
出典:1話
"春"については、1話の季節が春だったのでそのまんまですね。"修羅"については、本当はファンタを飲みたいのに茜の視線を気にして大人ぶってアイスコーヒーを飲むというような、小太郎の心理的葛藤を表していたのではないかと。

2話『一握の砂』 → 石川啄木の歌集

出典:d.hatena.ne.jp
歌集タイトルの元になったと思われる詩は下記の通り。

********************
いのちなき砂のかなしさよ
さらさらと
握れば指のあひだより落つ
********************
《詩の解説》
主体性のない砂のように、社会の流れに押し流されるこの自分の悲しさよ。掴まえた幸福も、気を緩めると砂と同じように逃げていく。
引用元:blogs.yahoo.co.jp(引用元へはこちらから)

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出典:2話
茜のポケットから無情にも滑り落ちていってしまった芋マスコットが"一握の砂"のような存在だったということでしょう。あるいは、周囲から影響を受けて緊張してしまいやすい茜が、"一握の砂"のような流されやすい存在だという意味もあったのかも。

3話『月に吠える』 → 萩原朔太郎の詩集

出典:ameblo.jp
この詩集の中に『月に吠える』という詩はないのですが、月に吠える犬が登場する詩はあります。そして、月に吠える犬がどういう存在なのかについては、この詩集の序文で次のように説明されています。

********************
月に吠える、それは正しく君の悲しい心である。冬になつて私のところの白い小犬もいよいよ吠える。

月に吠える犬は、自分の影に怪しみ恐れて吠えるのである。疾患する犬の心に、月は青白い幽霊のやうな不吉の謎である。
********************
出典:3話
月明かりの下で茜に告白した小太郎が、"月に吠える犬"のような存在だったということなのでしょう。小太郎は元ネタの犬のように病んでいたわけではないので、関連度はちょっと低そうですが、まあでも、小太郎にも「他の男に茜をとられてしまうかも」という不安や焦りみたいな気持ちはあったのでは?

4話『通り雨』 → 宮本百合子の小説

『通り雨』で検索しても有名な作品がヒットしないため、元ネタは何だろうと気になっていた人も多いはず。ですが、なんと2017年5月4日に開催された一挙上映イベントで、宮本百合子の小説が元ネタだと明かされました!

小説の内容を調べても全く情報が見つからなかったので実際に読んでみたところ、「家の庭で畳の取替え作業をしていたところ、雨が降ってきたため、畳を家の中に避難させないといけなくなり面倒なことになるが、最後には雨が止む」という日常の一コマを描いたような話でした。
出典:4話
4話は、雨が降ってきて会えなくなりかけて大ピンチと思ったけど、交際できることになって雨も止んで全然セーフ、という展開でした。ほぼ元ネタ通りの展開だったと言えるのでは?
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5話『こころ』 → 夏目漱石の小説

出典:www.amazon.co.jp
5話で小太郎が通っている塾の先生が解説していたように、明治時代の男女の三角関係のお話です。大雑把にあらすじを説明すると、

主人公(先生)とその親友Kが同じ女性(お嬢さん)を好きになる。Kは先生にお嬢さんを好きになったと打ち明けるが、先生はKに内緒でお嬢さんとの結婚を決めてしまう。結果、Kがショックを受けて自殺。
出典:5話
小太郎に茜をとられたと気づいた比良くんがショックを受けて転校でもするのかと思ったのですが違いました。K役は千夏で、お嬢さん役が小太郎、先生役が茜でした。

茜がこのまま千夏に小太郎との関係を内緒にしていると、元ネタ小説のような悲劇が起きてしまいそうですが、どうなるんでしょうか。

6話『走れメロス』 → 太宰治の小説

出典:www.amazon.co.jp
この作品のあらすじを簡単に説明すると、

「暴君に反逆した罪で処刑されることになったメロスが妹の結婚式に出席するために、親友に身代わりになってもらう。結婚式に出席した後、メロスは処刑場に全力疾走する。親友を裏切ることなく処刑場に現れたメロスを見て、暴君が改心してハッピーエンド」
出典:6話
茜が陸上の大会で走ったから、『走れメロス』が選ばれたというのも勿論あると思います。が、今までも茜が走る回はあったわけで、今回『走れメロス』が選ばれたのは、恋人を失うリスクを承知の上で友情を大切にしようとした茜の姿が、命を失う覚悟で親友を守ろうとしたメロスの姿と似ていたからではないかと思います。

7話『惜しみなく愛は奪う』 → 有島武郎の評論

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出典:www.amazon.co.jp
今回は元ネタと本編の内容的関連性はあんまり無さそうです。元ネタは恋人から何かを奪うという話なのですが、本編では恋敵から恋人を奪うという話になっていました。
《wikipedia 惜しみなく愛は奪ふ》
有島武郎の「愛」に関する思想が綴られた作品。 人を愛するということは、相手のすべてを奪って自己のものにすることとする思想。
引用元:ja.wikipedia.org(引用元へはこちらから)
出典:7話
7話は、小太郎が比良から茜を奪ったり、千夏が茜から小太郎を奪おうとしたりという内容でした。確かに「惜しみなさ」はすごく感じられました。

8話『ヰタ・セクスアリス』 → 森鴎外の小説

出典:www.amazon.co.jp
1909年に発表された作品。いやらしい内容であるとして、当時の政府から発禁処分を受けてしまった問題作です。しかし、内容はそこまで不真面目なものではなく、主人公の哲学者が自分の人生を振り返りながら性について考察するというものになっています。
出典:8話
発禁処分を受けた作品がサブタイだからどうなってしまうのかと思いましたが、8話は小太郎と茜がキスして終了。思ったより穏やかな展開でした。

9話『風立ちぬ』 → 堀辰雄の小説

《堀辰雄の小説 風立ちぬ》
美しい自然に囲まれた高原の風景の中で、重い病に冒されている婚約者に付き添う「私」が、やがてくる愛する者の死を覚悟し見つめながら、2人の限られた日々を「生」を強く意識して共に生きる物語。
引用元:ja.wikipedia.org(引用元へはこちらから)

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《宮崎駿監督の映画 風立ちぬ》
実在の人物である堀越二郎をモデルに、その半生を完全に創作して描いた作品であるが、堀辰雄の小説『風立ちぬ』からの着想も盛り込まれている。そのため映画のポスターには両名の名を挙げており、
引用元:ja.wikipedia.org(引用元へはこちらから)
出典:9話
9話では茜が小太郎に「千葉に引っ越すかも」と連絡していました。別れる原因が重病なのか引っ越しなのかという違いはありますが、別れを意識して限られた時間を生きるというところは元ネタと共通しています。

また、陸上部のメンバーがみんなで過ごせる最後の時間を大切にしようとしていたところも、元ネタのテーマと近い部分があったように思います。

10話『斜陽』 → 太宰治の小説

没落していく人々を描いた太宰治の代表作で、没落していく上流階級の人々を指す「斜陽族」という意味の言葉を生みだした。斜陽という言葉にも、国語辞典に「没落」という意味が加えられるほどの影響力があった。
引用元:ja.wikipedia.org(引用元へはこちらから)
出典:10話
小太郎から嫌われてしまった茜を表現したサブタイだったのだと思います。ただ、元ネタ小説が没落したまま終了だったのに対し、茜は普通に仲直りできていたので、結末は正反対でした。

むしろ、茜に振られて終了してしまった比良のほうが、元ネタ小説に当てはまっていると言えるのかも。

11話『学問のすすめ』 → 福澤諭吉の論文集

『学問のすゝめ』
文体は平易ながら、明治維新の動乱を経て新しく開けた新時代への希望と、国家の独立と発展を担う責任を自覚する明治初期の知識人の気概に満ち、当時の日本国民に広く受容された
引用元:ja.wikipedia.org(引用元へはこちらから)
出典:11話
11話では、小太郎が本気で勉強するようになり、それを見て、父と母が考えを改めてくれたおかげで、小太郎が茜と同じ高校に通うための道が開かれました。学問によって新しい道を開くという、元ネタ通りの展開と言えます。

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12話『それから』 → 夏目漱石の長編小説

《それから のあらすじ》
定職に就かず、毎月1回、本家にもらいに行く金で裕福な生活を送る長井代助が、友人平岡常次郎の妻である三千代とともに生きる決意をするまでを描く。
引用元:ja.wikipedia.org(引用元へはこちらから)
「それから」というタイトルは、作者の漱石が先に発表されていた「三四郎」の主人公である三四郎のようなタイプの人間の”それから”を描くという意味でつけられたものであることが、漱石自身が書いた連載予告で明かになっています。
引用元:detail.chiebukuro.yahoo.co.jp(引用元へはこちらから)
出典:12話
最終回12話のEDでは、今までEDで映っていたLINE画面とともに小太郎と茜の未来の姿が描かれました。一区切りついた物語の"それから"を描いたという点で、元ネタ小説と同様だったと言えます。

ただ、元ネタ小説では主人公が似たような性格の別な人に変わったというところがちょっと気になります。12話のEDについても、小太郎と茜の未来の可能性のひとつとして描いただけで、完全に同一人物というわけではないのかもしれません。

記事作成時に参考にしたサイト

他にも、月がきれいのまとめを作っています!

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