【話題の本】ラッセンとは何だったのか?、バブル期の画家、クリスチャン・ラッセンを分析する本
バブル期に一世を風靡した画家、クリスチャン・ラッセン。その人気と作品は、日本の美術界に大きな影響を与えました。本書は、ラッセンという存在を通して、日本の美術史、社会、文化の変容を多角的に分析します。
ラッセン現象の再考:バブル期を彩った人気画家、その本質に迫る
クリスチャン・ラッセン。その名は、バブル期の日本において、誰もが知る人気画家の代名詞となりました。鮮やかな色彩で描かれたイルカやクジラ、波しぶき、サンセットは、多くの人々の心を捉え、彼の作品は、高級マンションやオフィスに飾られるなど、社会現象とも言うべき人気を博しました。しかし、その人気とは裏腹に、美術界では長らくラッセンは真剣な議論の対象とはされてきませんでした。
本書『ラッセンとは何だったのか?[増補改訂版]』は、そんなラッセンという存在を通して、日本の美術史、社会、文化の変容を多角的に分析した、日本で初めてのラッセン論です。著者は、美術批評、社会学、都市論、精神分析など、多彩な分野の専門家たち。彼らは、ラッセンの絵画表現を、当時の日本の社会状況や美術界の動向と結びつけながら、ラッセンがなぜこれほどまでに人気を博したのか、その理由を探ります。
本書では、ラッセンの絵画に込められたメッセージ、彼の作品が人々に与えた影響、そして、ラッセンという存在が日本の美術史においてどのような位置づけを持つのか、について考察しています。また、ラッセンブームが過ぎ去った今、彼の作品はどのように受け止められるべきなのか、という問いについても、新たな視点から論じています。
バブル期の象徴とも言うべきラッセン。本書は、彼を通して、当時の日本の社会状況、美術界の動向、そして、人々の価値観の変化を浮き彫りにし、現代社会における芸術の役割について考えさせられる一冊となっています。
本書『ラッセンとは何だったのか?[増補改訂版]』を読んだ後、私はラッセンという画家に対する見方が大きく変わりました。単なる“バブル期の象徴”として片付けられてきたラッセンですが、本書では、彼の作品が当時の社会状況を反映していること、そして、彼が人々の心に与えた影響の大きさについて、改めて気づかされました。
著者の多様な視点からの分析は、ラッセンという人物像をより立体的に浮かび上がらせると同時に、当時の日本の社会状況や美術界の動向を深く理解する助けとなりました。ラッセンの絵画を単なる“癒し”や“装飾”として捉えるのではなく、社会や文化を反映した“表現”として捉えることの重要性を、本書は教えてくれました。
本書は、ラッセンの絵画に興味がある人だけでなく、当時の日本の社会状況や美術界の動向に興味がある人、そして、現代社会における芸術の役割について考えてみたい人にとって、貴重な一冊となるでしょう。