流暢な英語を話せるのに… 望月新一教授が海外講演を断っている理由
ABC予想を証明した天才数学者の望月新一教授は海外講演を断っていることで有名です。英語が話せないわけでもないのになぜ?と気になったので、ちょっと調べてみました。どうやら、『英語圏の人々は色眼鏡でアジア人を見ているため、海外で英語で講演しても正確に伝わらない』という考えのようです。
望月教授の理論は難解すぎて、理解できる研究者がほとんどいない
論文発表から現在に至る流れを簡単に説明すると次のようになります。
・2012年に望月教授が論文を自分のホームページにアップロード
・難解すぎて誰も理解できず3年間放置される
・理解するためのカンファレンスが開催されたり、サーベイ論文が発表されるようになる
・2017年になってようやく専門誌に論文が掲載される見通しが立つ
専門誌に論文が掲載されるには、他の研究者に論文を読んでもらって正しさを認めてもらうというプロセス(査読)が必要になります。しかし、望月教授の論文の場合は、論文を理解できる研究者が少なすぎて査読を進められず、なかなか専門誌に掲載できなかったのです。
望月教授も理解者が少ない状況を認識しており、対策をとろうとしている
2014年に自身のホームページにアップロードした報告書の中で望月教授は次のような主張をしています。
・私の理論を理解するには従来の知識は役立たない
・1から勉強をやり直してもらう必要がある
・理論の普及を促進するための努力を長期にわたり継続していくつもりだ
決して、望月教授は「理解されなくてもいい」とか「自分の力だけで理解しろ」などと思っているわけではなく、「理解してほしい」と思っていて、理解してもらうための努力をする気もあるのです。
しかし、なぜか望月教授は海外での講演を拒否している
望月教授は海外の研究者からのメールに回答したり、海外のカンファレンスにSkypeで参加したり、弟子をカンファレンスに派遣したりしたことはあります。しかし、自ら海外に出かけて講演をしたことはありません。さきほどの『WIRED.jp』の記事によれば、海外からの講演依頼は多数あったのにそれらを望月教授がすべて拒絶したとのことです。
研究者は世界中にいるのだから、理論を普及させたいと思うならば、海外講演は必要不可欠なものであるはず。それなのに、一体どうして望月教授は海外講演に応じないのでしょうか。
望月教授が海外講演しない理由に関して、よくある勘違い
英語が苦手だからでは? → 望月教授は英語は得意
多くの日本人にとって英語のスピーキングは難しいものです。そのため、望月教授も英語が話せないから、海外講演をしないのではないかと考えたくなります。
しかし、望月教授はアメリカに18年住んだ経験があり、アメリカの大学を卒業しています。英語が苦手とは到底思われません。また、海外の有名学術雑誌『Nature』の記事でも、
despite being fluent in English, he has declined invitations to talk about it elsewhere.
と書かれており、望月教授が流暢な英語を話せることは確実です。よって『英語が苦手だから海外講演しない』説は100%間違いと言えます。
人前で話すのが嫌いなのでは? → 日本では講演している
望月教授のブログの記述から海外講演しない理由がおおよそ判明
根本的な理由は「海外の人は文化・言語の問題により、歪んだ認識をしてしまうから」と思われる
望月教授はブログで
・18年間のアメリカ生活の中で、アメリカ人のアジア人に対する認識が歪んでいることに気付いた
・そういった歪みに敏感な体質だったため、いつも強い違和感を感じていた
・歪みを遮る壁のようなものに飢えている
・だから、国際交流や旅行が苦手である
というようなことを書いています。よって、海外講演しない理由は、
・海外で英語で講演しても歪んだ理解をされてしまう恐れがあるから
・海外に出かけ、海外で過ごすこと自体が苦痛であるから
ではないかと推測されます。
参考となるよう、望月教授が認識の歪みを具体的に語っている文章をピックアップ
例えば、日本人の日常生活では当たり前な風景である「海苔ご飯を箸で食べる」ということを英語で表現するとなると、「海苔」を「シーウィード=つまり、海の雑草」、「箸」を「チョップスティック=ものをつついたり刺したりするための木の棒のようなイメージ」というふうに表現するしかなくて、全体としては「未開人どもが、木の棒を使って、そこいらへんの海に浮かんでいた雑草のようなゴミをライスとともに、未開人っぽい原始的な仕草でもくもく食べている」といったようなイメージに必然的になってしまいます。
引用元:plaza.rakuten.co.jp(引用元へはこちらから)
例えば、高校では同じ寮の中に、韓国系やタイ系の人がいたりしましたが、私たちが別々の個人であり、同一人物ではないということを何度説明しても間違えられたり、大学ではよく知らない人からまるで親しい知り合いかのように(誤認されて)話しかけられたりしました。
引用元:plaza.rakuten.co.jp(引用元へはこちらから)
しかし、望月教授は海外を完全に拒絶しているわけではない
ブログで「壁に飢えている」などと書いているので、望月教授は海外との交流を完全にシャットアウトすることを望んでいるのかと思いそうになりますがそうではありません。
むしろ、海外と友好的に付き合いたいと考えていて、そのために一定の距離をとることが必要だと考えているようです。以下、望月教授のブログ記事より引用。
米国をはじめ、諸外国に対しては、
全体的に友好的な、開かれた姿勢
を保ちつつ、
一定の距離を置く
ことは、決して拳を振り上げるような、いわば「盾を突く」ような好戦的な姿勢ではなく(=そのように誤解されたりすることもあるようですが)、むしろ相手の文化や内面的な世界と誠意をもって真剣に向き合った経験から生まれた、
長期的な、安定的な平和を愛する姿勢
であると考えております。
引用元:plaza.rakuten.co.jp(引用元へはこちらから)
まとめ
望月教授は自身の理論が世界中に普及することを願っています。しかし、その一方で海外講演をすべて拒絶しています。矛盾しているようにも見えますが、本人のブログの記述から謎が解けました。望月教授は海外の人のアジア人に対する認識は歪んでいると考えていて、だから、海外講演しても歪んだ伝わり方をしてしまうと恐れているようです。
しかし、望月教授は決して海外を嫌っているわけではなく、友好的な関係を築きたいと考えています。また、Skypeでの海外カンファレンス参加や、弟子の海外派遣には応じたことがあります。
個人的には、海外講演せずとも、そういったやり方で距離を保ちつつ理論の普及を進めていくことは可能なのだろうと思います。
ほかにも望月教授の記事をいろいろ作っています!
記事作成にあたって使用した素材
講演そのものが嫌いならば、国内の講演も断るはず。海外講演を断る理由は講演嫌いだからではないと考えられます。