【将棋】七段の棋士がタイトル3期獲得したら九段に飛びつき昇段できるのか?徹底調査!
七段の棋士が八段に昇段するための条件は3つしかなく、そのうち、短期間で満たせるのは竜王獲得だけ。じゃあ竜王獲得できないとしばらく七段のまま?となったときに問題になってくるのが「タイトル3期獲得で九段」という昇段規定。この規定で九段に飛びつき昇段できないものなのか、調べてみました。
この記事の内容は古いです
2018年5月21日に、「タイトル2期で八段」という昇段規定が新たに設定されました。それにより、この記事で扱っていた「七段の棋士がタイトル3期で九段という条件を満たした場合、飛びつき昇段ができるのか?」という問題については、もう考える必要はなくなりました。
しかし、「タイトル2期で八段」という昇段規定ができるまで、どういう状況にあったのか?なぜそんな昇段規定が必要となったのか?そのあたりの背景を理解するための記事として、役に立つと思うので、この記事はそのままの状態で残しておくことにします。
九段昇段条件と八段昇段条件を比較
九段昇段条件のひとつ『タイトル3期獲得』だけは七段時点で満たせる
七段の棋士が竜王をとらず、A級にも昇級せず、七段昇段後190勝する前にタイトルを3期獲得してしまえば、八段昇段の条件を満たすことなく、九段昇段の条件を満たすことができてしまいます。
レアケースだとは思いますが、プロになりたての棋士が竜王戦以外で快進撃を続けた場合、そういう状況になる可能性があります。実際、藤井聡太六段が七段に昇段を決め、竜王以外のタイトルを3つとってしまえば、そういう状況になってしまいます。
そうなったら、いきなり九段に昇段できてしまうのか?八段の昇段条件を満たすまで九段昇段はお預けになってしまうのか?それが問題です。
公式情報が無いので、七段の棋士が『タイトル3期獲得』で九段になれるかどうかは不明
残念ながら、棋士の昇段ルールに関する公式な情報は、さきほど示した将棋連盟公式サイトの昇段規定のみとなっています。将棋連盟の内部にはもっと詳細な規定があるのかもしれませんが、公開されていないので外からは分かりません。
非公式な情報や、古い公式情報はいろいろあるのですが、八段を経由しなければいけないという情報と、経由しなくてもいいという情報の両方があって、よく分からない状態となっています。以下、そういった情報をひとつひとつ紹介していきます。
【1】過去の昇段事例 → 八段経由が必要だったが事例が古い
七段だった頃にタイトル3期を獲得した棋士としては屋敷伸之九段が存在します。屋敷九段の場合、どのような昇段経緯になったかというと、
1996年3月8日 勝数規定により七段昇段
1997年7月15日 タイトル3期獲得
2002年5月13日 勝数規定により八段昇段
2004年4月1日 タイトル3期獲得により九段昇段
というように、タイトル3期獲得した時点では九段になれず、規定の勝ち星を挙げて八段になるまで九段昇段はお預けとなったのです。タイトル3期を獲得してから、実際に九段になるまでにかかった時間はなんと7年!なお、八段昇段から九段昇段までに間が空いているのは、当時、「昇段は年に1回」、「勝ち星昇段による免許状の発行日付は翌年度の4月1日」といったルールがあったためです。
屋敷九段以降、七段だったときにタイトル3期を獲得した棋士は存在しません。よって、過去の事例にのっとって考えるならば、タイトル3期でいきなり九段になることはできず、八段経由が必要ということになります。
ただ、屋敷九段の事例は2004年という昔の話で、現在はその当時からはルールが変更されているのが気になるところです。
【2】昇段規定の変更に関する報道 → 八段経由が必要のようだが記述が曖昧
さきほど屋敷九段の事例は古いのが問題と言いました。実際、屋敷九段が九段に昇段した2004年以降、昇段規定には変更が加えられているので、その変更が「タイトル3期で九段」にも影響している可能性を考えないといけません。
昇段規定が大きく変わったのは2006年と2009年。2006年の変更では、竜王戦の規定による昇段についてのみ、飛びつき昇段(2段以上の昇段)と1年以内の2度以上の昇段が認められるようになりました。それは今回のタイトル3期の話には関係ないので問題ありません。
問題は2009年の変更です。その変更に関して、朝日新聞は次のように報道しました。
日本将棋連盟は4月から、「1年に1段位」と制限していた昇段規定を改めた。タイトルを獲得した場合、六段以下の棋士は七段に、女流棋士は女流三段に飛び付け昇段する。また、六段以下が全棋士参加棋戦で優勝した場合と、五段以下でタイトル挑戦者になった場合は1段位昇段する。
引用元:web.archive.org(引用元へはこちらから)
これをどう解釈するかが問題です。「今までは飛びつき昇段と年に2度以上の昇段を認めていたのは竜王戦だけだったけど、今後はどんな棋戦でも認める」と解釈するならば、タイトル3期で九段についても飛びつき昇段が認められることになります。しかし、「タイトル獲得による七段昇段についてのみ、飛びつき昇段を認める」と解釈するならば、タイトル3期で九段については飛びつき昇段は認められないことになります。
ちょっとこの文章だけだと、昇段規定の改定の影響がどこまで及ぶのか、正確な判断は難しいです。しかし、タイトル獲得による七段昇段に言及して、タイトル3期獲得による九段昇段に言及していないということから、タイトル3期で九段昇段の場合は飛びつき昇段は認められないと解釈するのが妥当でしょうか。
【3】将棋連盟のコラム記事 → 八段経由が必要と明言しているが記述内容が古い
将棋連盟の公式サイトでは『プロ棋士昇段には5つの方法があった。意外と知られていない、その仕組みとは?』というコラム記事が公開されています。その記事では「タイトル3期獲得かつ八段に昇段していること」という昇段条件を満たせば、九段になれると書かれています。その記事の更新日は「2017年02月01日」となっています。
「最近の連盟の公式コラム記事でそこまではっきりと八段経由が必要と書いてあるなら、もう答えは出たようなもの」と思うのは早計です。残念ながら、このコラム記事には「飛びつき昇段は竜王戦の規定でしか認められない」という趣旨の記述があります。さきほど説明したように、2009年に昇段規定が変更され、竜王戦以外での飛びつき昇段も可能になっているので、そういった記述は現在の昇段規定とは食い違っています。
コラム記事の内容が本当に最新かつ正確なものなのかについてはちょっと疑問があると言わざるをえません。八段経由が必要という記述をそのまま受け入れていいのかどうかは悩ましいところです。
【4】昇段規定の変更履歴 → 八段経由は不要な可能性が高い
実は、竜王戦以外の飛びつき昇段を認める昇段規定の変更に関して、朝日新聞の報道が出たのが2009年4月22日だったのです。まさにそのタイミングで昇段規定の書き換えが行われていたのです。
もし「タイトル3期で九段」については今まで通り飛びつき昇段を認めないということなら、記述を変える必要はなかったはずです。わざわざ記述を変えたのですから、2009年の昇段規定変更は「タイトル3期で九段」についても影響しているはずです。
昇段規定の変更履歴を見る限りでは、今はタイトル3期で九段に飛びつき昇段できるように思われます。
結論:タイトル3期で七段から九段に飛びつき昇段できる可能性もあるし、できない可能性もある
将棋連盟公式サイトの昇段規定には「タイトル3期獲得で九段」と書いてあるのみで、八段を経由することが必要なのかどうか、よく分かりません。しかし、屋敷九段の事例、連盟のコラム記事、昇段規定変更に関する報道記事を調べると、八段経由が必要である可能性が高いように思われます。ですが、その一方で、昔の昇段規定にはあった「八段経由が必要」という記述が消されたという経緯もあり、八段経由が不要だったとしても不思議ではありません。誰かが七段でタイトル3期をとってみないとどうなるか分からない状況となっています。
以上、「タイトル3期で九段」に関する解説でした!普段は藤井聡太の記事をいろいろ書いています!
記事作成にあたってはWikipediaや連盟の記事などを参考にしました
しかし、八段になる前に満たすことのできる九段昇段条件がただひとつだけ存在します。