しかし、結果的には4回転フリップは転倒に終わり、7.3点にしかなりませんでした。素直に4回転トゥループを跳んでいれば、10.3点以上をとれていたはずなので、得点だけを見るなら、勇利の判断は間違っていたと言えます。
とはいえ、ヴィクトルは物凄い驚き方をしていましたし、周囲の驚きも相当なものでした。常々、ヴィクトルは周囲を驚かせることが大事だと言っていますし、ヴィクトルの弟子としては正しい行動だったと言えそうです。
では他の選手と比較してみましょう。YOI世界では4回転トゥループとサルコウを跳べるのは普通みたいなので、それらを除いて、跳べる4回転を列挙すると、
JJ :ルッツ
クリス :ルッツ
勇利 :フリップ(転倒)
スンギル:ループ
エミル :ループ
そう、トップレベルの選手でさえ、トゥループとサルコウ含め3種類の4回転を跳ぶのが限界なのです。5種類の4回転が跳べてしまうヴィクトルがどれだけ異常な存在か分かるはず。
なお、最後の1種類、4回転アクセルについては、現実のトップスケーターたちも実現は困難と感じているようです。
ただ、YOI世界のFS滑走順の決め方は実世界の2015年以前に用いられていた決め方であり、実世界の2016年以降の決め方とは違っているので注意してください。実世界ではSP成績の逆順ではなく、抽選方式に変わっています。
SPの滑走順はどう決まるかというと、2015年以前は世界ランキングの逆順、2016年以降は抽選方式となっています。YOI世界がどっち方式なのかは不明です。しかし仮に世界ランキング方式だとすれば、ロシア大会で4番目、中国大会では3番目に滑った勇利は、けっこう世界ランキングが高いことになります。
なお、ここまでの話はすべてグランプリシリーズ限定の話です。大会が変われば、滑走順の決め方も変わるのでご注意を。
本来の勇利のフリープログラムは次のようになっていました。
4T-2T 4S 3Lo 3A 3F 3A-1Lo-3S 3Lz-3T 4T
FSではコンビネーションジャンプは3回までというルールがあるのですが、きちんとそのルールを守れています。しかし、勇利が変更を加えたことで、プログラムは次のように変化してしまいました。
4T-1T 4S 3Lo 3A 3F 3A-1Lo-3S 3Lz-3T 4T-2T
見ての通り、コンビネーションジャンプが4回になってしまっています。そのため、最後の4T-2Tで勇利は大幅な減点を受けてしまいました。ヤコフが怒るのも当然と言えます。
ではなぜ勇利はそんな変更をしたのか?正確なところは分かりませんが、「2Tを入れ損なったから、どこかで入れないともったいない」と考えて、コンビネーションジャンプの回数制限をうっかりしたのではと思われます。あるいは最初の失敗を4T-1Tではなく、4Tと錯覚したのかもしれません。