2024年8月30日、越境ECの最新トレンドを1日で網羅できるオンラインセミナー「越境ECフェス2024」が開催されました。

セミナーには250名以上が参加し、各企業の講演や質疑応答コーナーは熱気に包まれました。今回は、このイベントの模様をレポートとしてお届けします。

越境EC市場の現状と未来：東南アジアに注目！
トップバッターを務めたショッピージャパン株式会社の小畑裕樹氏は、東南アジアと日本のEC市場の違いを解説。日本の少子高齢化とは対照的に、東南アジアでは15～64歳のコア層が3.8億人と若年層が中心であり、経済成長や物価上昇、インバウンド需要の回復、そしてブルーオーシャンという点で、越境ECの大きな可能性を秘めていると強調しました。

中国市場とライブコマースの動向
トランスコスモス株式会社の小華和圭氏は、中国市場の現状とライブコマースの盛り上がりについて語りました。近年、中国経済は変化の兆しを見せていますが、インバウンド消費の回復に期待が高まっています。同社では、ロイヤリティとCRM強化による顧客との強固な関係構築を提唱し、新たな顧客層への訴求を促すコンテンツ活用を推奨しました。また、アリババSystemと連携した独自のシステムでリユース品の越境ECも推進し、その成長性を示しました。

越境ECにおける決済サービス
Payoneer Japan株式会社の高浦進氏は、越境ECに欠かせない決済サービスについて解説。eBay、Coupang、Shopee、JOOMなど、多くの越境ECモールとの連携を強調しました。海外での売上を日本円に換金する際には、手数料や手続きが複雑になることが多く、ペイオニアのサービスは、海外マーケットプレイスから日本円での入金を実現し、越境EC事業者の負担を軽減する役割を果たしています。

ジェトロによる海外販路開拓支援
独立行政法人 日本貿易振興機構（ジェトロ）の太田真之氏は、オンラインでの海外販路開拓支援サービスを紹介しました。米国／英国Amazonへの出品支援プログラム「JAPAN STORE」や、海外バイヤーとのマッチングサービス「JAPAN STREET」など、海外進出を検討する事業者にとって強力なサポート体制が整っていることをアピールしました。

eBayの越境EC戦略：リユース市場の拡大
来年30周年を迎えるeBayは、世界最大のプラットフォームとして、全体取引の66％をリユース製品が占めています。イーベイ・ジャパン株式会社の篠原星氏は、越境EC初心者向けに売上が好調なカテゴリーを紹介するとともに、日本のECと越境ECの違いやポイントを解説しました。複数国への出品やシステム連携、真贋サービスなど、越境EC事業者の課題解決に貢献する幅広いサービスを紹介しました。

アリババのBtoBプラットフォーム：グローバルなビジネスチャンス
アリババ株式会社の須藤雄紀氏は、中国向けBtoCではなく、世界中のバイヤーと繋がるBtoBプラットフォームを紹介しました。オンライン海外展示会の問い合わせは、アメリカ、欧州、東南アジアなどから多く寄せられており、中東、アフリカ、南米からの問い合わせも増加傾向にあります。BtoBとBtoCの違いやEC市場の動向、バイヤーニーズへの対応事例などを紹介し、グローバルなビジネスチャンスを提示しました。

ZenGroupによる配送コスト削減
ZenGroup株式会社のコーピル・オレクサンドル氏は、売れる商品を見つけるポイントや、越境ECにおける配送コスト削減について解説しました。希少性が高く購入コストが低い商品やハイブランドのリユース品など、具体的な商品事例も交えながら、同社の配送サービスを活用することで、コスト削減を実現できることを強調しました。

Shopifyによる顧客ファーストな越境EC
Shopify Japan株式会社の熊澤絵那氏は、動画でShopifyを活用した越境ECの全貌を紹介。顧客ファーストのショップ作成、マーケットごとのドメイン戦略や為替レート調整、そしてShopifyエコシステムとの連携による専門性の強化などをアピールしました。さらに、実店舗向けソリューション「Shopify POS」も越境ビジネスに活用できることを示しました。

JOOM：ヨーロッパで急成長する越境ECモール
ヨーロッパで急成長を続けるJOOMは、100カ国以上のユーザーに利用され、20カ国以上で越境ECアプリのTOP3にランクインしています。シニア・アカウント・マネージャーのチトワ・アナスタシア（ナスチャ）氏は、新品・リユース品の販売が可能で、レディースファッションが人気のカテゴリであることを紹介。日本セラーからは、アニメグッズ、腕時計、化粧品などが人気商品となっています。

Coupang：韓国市場への参入を促進
韓国を中心に越境ECを展開するCoupangは、「Coupangのない生活は考えられない」を目標に掲げています。スージー氏と小野氏は、日本から韓国への越境ECにおけるポイントを紹介し、3月にローンチされた「ロケット越境EC」サービスを紹介しました。このサービスは、Coupangの倉庫を活用することで、韓国への発送を3日で完了できる物流システムを提供しています。

ワサビの越境ECサービス：誰でも簡単に始められる
株式会社ワサビは、EC一元管理システム「ワサビスイッチライト」と、丸投げ型越境EC販売「WASABIプロジェクト」を紹介しました。初期費用0円から始められるワサビスイッチライトは、30モール以上に出品可能で、販路拡大を目指す事業者に最適です。一方、WASABIプロジェクトは、商品登録だけで受注対応や海外発送を代行してくれるサービスで、越境EC初心者でも安心して事業を始められます。

まとめ
今回の越境ECフェス2024では、各企業がそれぞれの強みを生かしたサービスや戦略を紹介し、越境EC市場の現状と未来を示しました。参加者からは、BtoBビジネスの説明が多かったものの、多くの企業から直接話を聞けたことや、越境ECの必要性を感じたという声が寄せられました。今後の日本において、越境ECはますます重要なビジネスモデルになることは間違いありません。

越境ECフェス2024のレポートを読み終えて、改めて越境ECの潜在力と可能性に驚かされました。

特に印象的だったのは、東南アジア市場の成長性と、各企業が提供する多様なサービスです。少子高齢化が進む日本市場とは対照的に、東南アジアは人口増加と経済成長が著しく、越境ECによって日本企業が新たなビジネスチャンスを掴むことができるという期待感に満ち溢れています。

ショッピージャパン、Coupang、JOOMなど、各企業が提供するサービスは、越境ECの参入障壁を大きく下げるものだと感じました。特に、Coupangの「ロケット越境EC」のように、物流面での課題を解決するサービスは、日本企業にとって魅力的でしょう。

また、アリババやeBayのように、グローバルなプラットフォームを持つ企業が、BtoBやリユース市場に力を入れていることも興味深いです。これは、単に商品を販売するだけでなく、サプライチェーン全体を最適化し、より効率的なビジネスモデルを構築する方向へ、越境ECが進化していることを示唆していると言えるでしょう。

一方、越境ECには、言語や文化、法律など、様々な課題も存在します。ジェトロのような機関が提供する支援サービスは、これらの課題を乗り越える上で非常に重要です。

さらに、トランスコスモスが示したように、インバウンド消費の回復は、越境ECにとって追い風となるでしょう。訪日外国人が増加する中で、日本製品への関心が高まり、越境ECを通じた販売機会も拡大すると考えられます。

しかし、越境ECは決して容易ではありません。各企業の事例からもわかるように、成功には、市場調査、顧客ニーズの把握、そして適切なサービスやプラットフォームの選択が不可欠です。

今回の越境ECフェス2024は、越境ECの現状と未来を理解し、新たなビジネスチャンスを模索する上で、大変有益な機会だったと言えるでしょう。参加者からの感想からもわかるように、多くの企業が越境ECへの関心を高めています。

日本企業が積極的に越境ECに参入し、グローバル市場で活躍していくためには、課題を克服し、積極的に変化に対応していく必要があります。今回のレポートが、その第一歩を踏み出すためのヒントになれば幸いです。

今後、越境ECはさらに発展していくでしょう。そして、日本企業がグローバル市場で成功するための重要な戦略の一つとなっていくでしょう。この流れに乗り遅れることなく、積極的に挑戦していくことが重要です。