酒粕やカカオの皮など、様々な未活用素材を用いたエシカルジンを製造・販売するエシカル・スピリッツ株式会社が、3.8億円の資金調達に成功しました。
今回の資金調達は、サントリーホールディングス株式会社やSiiibo証券株式会社などから調達。この資金を活用し、2025年春に茨城県つくば市に建設予定の『つくばねグリーンヒル蒸溜所』で、エシカルジンの生産拡大と、世界初となる『木の酒』の開発・生産を加速させます。
エシカル・スピリッツの原点は、日本酒製造過程で大量に発生する酒粕の有効活用です。年間3,200トンもの酒粕が未活用となっている現状に対し、同社は酒粕を蒸留し、エシカルジン『LAST』を開発しました。この『LAST』は、酒粕の豊かな香りを生かしたジンとして、バーや飲食店、百貨店など全国1,000店舗以上で販売され、高い評価を得ています。
つくばねグリーンヒル蒸溜所では、酒粕を蒸留できる設備を導入することで、全国の酒蔵からより多くの酒粕を仕入れ、エシカルジンの生産量を7倍に拡大する計画です。2030年度には、年間314トンの酒粕をジンに蒸留することを目標に掲げています。
さらに、同社は『WoodSpirits』プロジェクトにも注力しています。これは、国立研究開発法人森林研究・整備機構と共同で取り組む、木材を原料とした世界初の『木の酒』の開発プロジェクトです。年間970万トン発生すると言われる林地未利用材の有効活用と、国内林業の活性化を目指しています。2025年夏には、この『木の酒』の製造開始を予定しています。
エシカル・スピリッツは、東京蔵前にある『東京リバーサイド蒸溜所』も運営しています。この蒸留所は、エシカル生産および消費に特化した世界初の再生型蒸留所として、酒粕以外にも、ビールやカカオの皮など50種類以上の未活用素材を活用し、ジンの製造を行っています。また、同蒸留所は、2024年に開催された『東京ウイスキー&スピリッツコンペティション』で、初代「ベスト・ジャパニーズ・クラフトジン・ディスティラリー」を受賞するなど、その品質も高く評価されています。
エシカル・スピリッツは、今後もサステナビリティを重視し、未活用素材の価値を高めることで、より持続可能な社会の実現に貢献していくことを目指しています。
エシカル・スピリッツの挑戦は、単なるお酒造りではなく、社会問題の解決と革新的な技術を融合させた、まさに現代社会が求める事業モデルと言えるでしょう。
酒粕や木材といった、これまで廃棄されていた資源に新たな価値を見出し、魅力的な商品へと生まれ変わらせるその発想は、非常に創造性に富んでいます。特に、世界初の『木の酒』という挑戦は、従来の常識を覆す革新的な試みであり、その成功は、林業の活性化や持続可能な社会の実現に大きく貢献する可能性を秘めています。
また、エシカル・スピリッツは、サステナビリティという理念を体現するだけでなく、その商品においても高い品質を追求し、世界的な賞を受賞するなど、その実力は折り紙つきです。酒粕の豊かな香りと、繊細なボタニカルの香りが織りなすエシカルジン『LAST』は、まさにエシカルな消費を体現するお酒と言えるでしょう。
さらに、東京リバーサイド蒸溜所は、蒸留所の見学やジンの試飲、バーでの食事など、消費者がエシカルな取り組みを五感で体験できる場を提供しています。こうした取り組みは、単に商品を販売するだけでなく、消費者の意識改革にも貢献し、よりサステナビリティな社会への意識を高める役割を担っていると考えられます。
ただし、エシカル・スピリッツの挑戦は、まだ始まったばかりです。世界初の『木の酒』の製品化や、エシカルジンの更なる普及には、技術的な課題や市場開拓といった克服すべき課題も残されています。しかし、今回の資金調達を機に、同社の挑戦はより加速し、その取り組みは、今後ますます注目を集めることでしょう。
エシカル・スピリッツの挑戦は、私たちに、消費者の視点から社会課題と向き合い、より良い未来を創造していくことの大切さを教えてくれます。彼らの挑戦が成功し、より多くの人がエシカルな消費を選択する未来が実現することを期待しています。