2024年03月16日更新
将棋 shogi 藤井聡太

藤井聡太は自宅の将棋ソフトとほぼ互角!ではPonanzaと比較するとどちらが強いのか、調べてみた!

藤井聡太四段なら、最強コンピューター将棋ソフトのPonanza(ポナンザ)に勝てるのではと期待している人も多いはず。実際、藤井四段は自宅で使っているソフトと同じ強さという情報も出ています。しかし、すでに将棋倶楽部24でPonanzaに敗北していたと判明!ソフトの成長スピードを考えると、将来的にも…。

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ざっくりと結論を述べると…

藤井四段が自宅でソフトと対戦してほぼ互角の戦績という情報から、藤井四段なら最強ソフトPonanzaに勝てるのでは?と期待されました。しかし、すでに藤井四段はPonanzaと対戦したことがあり、3~4連敗という結果と判明。そのときより、現在の藤井四段のほうが強くなってるとはいえ、ソフトの成長スピードはそれを上回っており、藤井四段がPonanzaに勝てる可能性はほとんどありません。

以下、詳しく説明していきます。

藤井四段本人の発言から、ソフトとほぼ互角と判明!

──ソフトとの勝敗は?

藤井四段「(ソフトの能力は)パソコンのスペックによって変わりますので。私はそんなに凄いスペックのパソコンを使ってないので、勝ち越すくらい……まではいかないです(笑)」
引用元:bunshun.jp(引用元へはこちらから)
勝ち越せていると言いたいところだけれども、残念ながら勝ち越せていないということのようです。しかし、勝ち越しという言葉が出てくるぐらいですから、大幅に負け越しているというわけではなさそうです。ほぼ互角と考えていいでしょう。

使っているパソコンは家族用のデスクトップパソコン

出典:mainichi.jp
調べたところ、藤井四段がパソコンを使って将棋の検討をしている写真が見つかりました。ソフトと対戦したパソコンもおそらくこのパソコンでしょう。自宅のリビングに置かれているパソコンとのことです。

ディスプレイの右下に『I-O DATA』と書かれているので、一体型パソコンではなくデスクトップパソコンと思われます。よって、そこそこの性能はあるはずですが、リビングに置かれているようなパソコンですし、藤井四段の言葉通り、凄いスペックのパソコンではないと考えていいはずです。

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藤井四段が使用しているソフトは『Apery WCSC25』

テレビ番組で自宅取材が行われ、藤井四段がさきほどのパソコンでShogiGUIを使って何らかのソフトと対戦している様子が映りました。
出典:www.youtube.com
最後の文字が読み取れませんが、ソフト名は「Apery WCSC2?」だと判明しました。これは、Aperyというソフトの、第2?回WCSC出場バージョンという意味。WCSCは世界コンピュータ将棋選手権の略称です。

同じソフトでもバージョンによって強さが変わるので、最後の1文字が何であるかが重要です。Apery開発者の方のサイトを見てみたところ、
出典:hiraokatakuya.github.io
WCSC出場バージョンは第25回バージョンと、第26回バージョンしか公開されておらず、第26回バージョンが公開されたのは2016年8月20日と判明しました。

後述しますが、藤井四段は2016年4月から9月3日まで開催されていた奨励会三段リーグの途中(5~7月ごろ?)からソフトを使い始めたとのことです。よって、時期的に、藤井四段が使っているのは第25回バージョンと考えられます。

『Apery WCSC25』の強さは、プロをはるかに上回る!

出典:www.computer-shogi.org
こちらは、2015年5月に開催された第25回世界コンピュータ将棋選手権の決勝リーグの対戦結果です。『Apery WCSC25』は第4位でした。当時のソフトの中ではトップレベルだったと言えます。

では、当時トップレベルのソフトは、プロと比べてどのぐらいの強さだったのでしょうか?参考になるのはほぼ同じ時期(2015年3~4月)に行われた、プロチームとソフトチームの対抗戦『電王戦FINAL』です。

『Apery WCSC25』より弱いSeleneが永瀬拓矢六段に勝率9割

出典:nicofarre.jp
永瀬六段は『電王戦FINAL』でSeleneというソフトと対戦しました。対戦には勝利したのですが、対局後の会見で驚きの事実が発覚しました。

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永瀬六段は練習対局での勝率は1割程度だったとも明かし、本局の進行についても「自分が勝てない、Seleneに全部負かされるぐらいの形になってしまった。まずいことになってしまったな」と述べています。
引用元:shogi1.com(引用元へはこちらから)
若手強豪として知られる永瀬六段でさえ、Seleneに対する勝率がわずか1割。Seleneは第25回世界コンピュータ将棋選手権で8位のソフトですから、4位だった『Apery WCSC25』はもっと強いです。よって、『Apery WCSC25』はプロをはるかに超える強さと考えられます。

そう言われると、そんな恐ろしい強さの『Apery WCSC25』と互角の藤井四段はとんでもない強さと思うかもしれません。しかし、永瀬六段が使っていたパソコンは、大会主催者が貸出した8コア16スレッドの超高性能ゲームパソコンでした。
藤井四段が使っているパソコンとはスペック差が大きいと思われ、比較するのは難しそうです。

藤井四段が最新スペックのパソコンでソフトと戦ったらどうなるのか、気になるわけですが…。

藤井四段はネットでPonanzaと戦ったことがあって、負けていた!

《スポーツ報知のインタビュー記事》

藤井四段「実は自分もポナンザとネットで3、4局指したんですけど、全部負けてしまいました。」
引用元:www.hochi.co.jp(引用元へはこちらから)

Ponanzaとは

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出典:www.4gamer.net
Ponanzaは東大出身の山本一成さんが開発した将棋ソフト。2013年以降の世界コンピュータ将棋選手権および電王トーナメントで1位もしくは2位を取り続けており、最強の将棋ソフトと言われています。

藤井四段とPonanzaの対局場所は将棋倶楽部24

出典:internet2.shogidojo.net
『将棋倶楽部24』のリスト画面と、対局画面。
『将棋倶楽部24』はプロや奨励会員、アマ強豪も登録している、インターネット将棋対戦サイトです。山本さんはPonanzaの強さをチェックするために過去2回、Ponanzaをこのサイトに参戦させています。1回目が2013年5月、2回目が2015年12月です。1回目のとき、藤井四段は小5。それは幼すぎると思うので、対戦は2回目、藤井四段が中1のときと考えるべきでしょう。

参戦時のパソコンのスペックについては、山本さんのブログなどいろいろ調べた結果、電王戦Finalのときと同様に超高性能だったと分かりました。やはり藤井四段といえど、最新スペックのパソコンで最強のソフトと対戦となると、「3、4局指したんですけど、全部負け」になってしまうようです。

ちょっと残念な結果ではあるわけですが、実は2回目の参戦時のPonanzaの全成績は69勝無敗でした。まぐれで勝てた人すら1人もいないという圧倒的な強さ。これでは、藤井四段が勝てなかったのもしょうがないという感じがします。

藤井四段は急成長しているし、今ならPonanzaに勝てるのでは?

出典:headlines.yahoo.co.jp
藤井四段がPonanzaに負けたのは2015年12月。しかし、今はそれから1年半が経過しています。そして、藤井四段はその1年半の間に三段リーグを駆け抜け、プロになり、連勝記録を打ち立てました。

藤井四段の棋力は凄いスピードで向上していると考えられます。藤井四段自身も、自らの成長を将棋倶楽部24の点数で説明しています。

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つまり、藤井四段は将棋倶楽部24のレーティングで現在3300点ぐらいあることになります。それだけあるなら、Ponanzaにも勝てるのでは?と期待したくなります。しかし…。

将棋ソフトのほうが成長スピードが速い!だから藤井四段が追いつくのは無理!

《将棋対戦アプリ『将棋ウォーズ』を開発したHEROZの代表取締役である林隆弘氏の説明》

林隆弘氏はAIの進化について「将棋の場合、1年前のAIと対戦させた場合、最新のAIが90%は勝つ、それくらいの異常な進化のスピード」と話す。
引用元:abematimes.com(引用元へはこちらから)
藤井四段は1年ちょっとで将棋倶楽部24のレーティングが200上がったと言っていましたが、将棋倶楽部24のレーティング200差というのは勝率75%ぐらいの差になります。
一方、AIは1年前の自分に対して勝率90%。これは将棋倶楽部24のレーティング差に換算すると320となります。

1年ちょっとで200上がる藤井四段と、1年で320上がるソフト。追いつく日は永遠に来ないと言えます。

また、現在の藤井四段は3300点と予想されるわけですが、Ponanzaはなんと…。
《山本一成さんのブログ》

Ponanzaの今回の将棋倶楽部24遠征の結果は69連勝、

レーティングは2年前位の自己最高レーティングを塗り替えて3455点。

本当に本当に強くなった。
引用元:ponanza.hatenadiary.jp(引用元へはこちらから)
2015年の時点ですでに3455点に到達していたのです。残念ながら現在の藤井四段でさえ、2015年のPonanzaに劣っているということになります。であれば、もう2017年のPonanzaとは勝負にならないと言えます。

『佐藤天彦名人 VS Ponanza』の結果的にも、藤井四段がPonanzaに勝てるとは思えない

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出典:originalnews.nico
すでに将棋倶楽部24のレーティング的に藤井四段がPonanzaに勝つのは極めて困難と説明したのですが、ダメ押しとして、別な角度からも説明しておこうと思います。

2017年にPonanzaと佐藤天彦名人との対局が行われ、結果はPonanzaの2連勝でした。衝撃的だったのは、対局後の佐藤天彦名人の発言です。
(対局前の事前研究でポナンザと何局くらいやって感触はどうだったか?)

「途中で切り上げたのもあるので正確ではないが短時間の対局で150局ほど。ポナンザの初手が22通りあるので長時間の対局より短時間で数をこなした。正直事前研究で勝てたことはほとんどない。」
引用元:benikalasu.hatenablog.com(引用元へはこちらから)
「勝てたことはほとんどない」と言ってるので、勝率は5%ぐらいだったのでしょう。Ponanzaから見れば、勝率95%です。

よって、藤井四段がPonanzaに勝とうとするならば、佐藤天彦名人と対局して、Ponanzaと同様に勝率95%ぐらいを出せないといけないことになります。藤井四段はまだ佐藤天彦名人と対局していませんが、参考までに非公式戦を含む、藤井四段の今までの対戦結果を対戦相手の棋士レーティング別に整理すると…。
R1800台:○(羽生)●(永瀬)●(羽生)●(豊島)
R1700台:○○○○○○○○○
R1600台:○○○○
R1500台:○○○○○○○○○○○○
R1400台:○○○○
R1300台:○○○
R1200台:○

このようになります。集計対象は公式戦28連勝と非公式戦9局(炎の7番勝負、獅子王戦、第24回将棋まつり)です。

ぱっと見、37戦して34勝3敗で勝率91.8%と、素晴らしい結果に見えます。しかし、佐藤天彦名人の棋士レーティングは1883あるので、R1800台の対戦結果が重要です。では、R1800台との対戦に限った勝率はいくらかといえば、4戦して1勝3敗、わずか25%です。

これではとても佐藤天彦名人に勝率95%など達成できるとは思えません。勝ち越せるかどうかさえ怪しいです。佐藤天彦名人との力関係から考えても、やはり藤井四段はPonanzaに遠く及ばないと言えます。

棋士レーティングは下記サイトで調べました。なお、プロ棋士のレーティングは、さきほどまで説明していた将棋倶楽部24のレーティングとは別物なので注意してください。ついでに、将棋ソフトの比較に用いられるfloodgateのレーティングというのもあって、それもまた別物です。

藤井四段が今後ソフトと対局する機会は無いと思われる

プロとソフトの対戦は、ドワンゴが主催する電王戦という棋戦で、2011年頃から継続的に行われてきました。しかし、電王戦は2017年の第2期電王戦をもって終了すると発表されました。

ドワンゴはプロとソフトの対戦に最も意欲的に取り組んできた企業です。その企業が撤退を決めたとなると、もうプロとソフトが対戦する場が設けられることはないと考えられます。

藤井四段とソフトを対戦させるためだけに電王戦が再開される可能性はあるのでは?と思う人もいるかもしれませんが、ドワンゴ会長のコメントを見る限り、その可能性は無さそうです。
ドワンゴ会長の川上量生は「将棋の世界において単純に将棋プログラムと人間の優劣を競うというそういう電王戦は佐藤名人対ponanzaの対局を持って終了したいと思う」とコメントした。
引用元:ja.wikipedia.org(引用元へはこちらから)
「AIが人間よりも優れていると解釈している人もいるが、そうだとは思わない。人間が優れている点もあることを世の中に示すには、いまある電王戦を続けるべきではない」(川上会長)
引用元:www.itmedia.co.jp(引用元へはこちらから)

藤井四段自身、ソフトを競争相手とは考えていない

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──最強のソフトと言われるポナンザと指したら勝てると思いますか?

藤井四段「人間と比べるとコンピューターの能力の進化は限度がないです。そういう意味では人間とコンピューターが勝負する時代ではなくなったのかなと思います」
引用元:bunshun.jp(引用元へはこちらから)
――コンピュータが台頭する中、人間として新手、新戦法、新構想を創出したいという思いは。

藤井四段「いまはコンピュータがかなり強くなっていて、盤上において人間が勝る領域はどこにあるのか、あるいは全くなくなるのかは分からないですけど、コンピュータに関係なく面白い将棋を指すことは棋士の使命なので。そういう将棋を指せるように頑張りたいと思います」

引用元:book.mynavi.jp(引用元へはこちらから)

むしろ、藤井四段はソフトを研究パートナーと考えている

藤井四段が囲み取材の時に『三段リーグの途中から将棋ソフトを研究し、自分の将棋を見直した』と正直に語っていた
引用元:biz-journal.jp(引用元へはこちらから)

結論

藤井四段が『Apery WCSC25』とほぼ互角という情報から、藤井四段なら最強ソフトPonanzaに勝てるのではと期待されました。しかし、過去に藤井四段はPonanzaと将棋倶楽部24で対戦したことがあり、3~4連敗していたことが発覚しました。現在の藤井四段はそのときより強くなっているとはいえ、ソフトの成長スピードはそれをはるかに上回っており、今対戦してもほとんど勝ち目はないと思われます。藤井四段自身、ソフトを競争相手ではなく、研究パートナーと見なしています。

ほかにも、藤井聡太四段のまとめを作っています!

細かな参考資料いろいろ

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